プロ野球チーム誕生９０年

ベーブ・ルースの年俸がフーバー大統領の年俸を超えたのは１９３０年のことだった。「大統領よりも成績が良かったんだから当然だね」というルースの言葉が残っている▲大統領は前年に始まった世界恐慌に右往左往だったという。“成績不良”と評されるのは気の毒だが、大アーチを放っては人々の歓喜を誘ったルースの言葉に誰もがうなずいただろう▲その４年後、ルースを柱とする米大リーグ選抜が来日し、対戦した日本チームが母体となって、同じ年に現在の読売巨人軍ができた。日本プロ野球チームの誕生から今年で９０年になる▲ルースたちとの対戦で日本チームは１６戦全敗だった。長い長い時を経て、ワールド・ベースボール・クラシック（ＷＢＣ）で日本が米国を破り優勝を果たすという未来を誰が思い描いただろう▲ここに細かく記すまでもなく、大谷翔平選手の米大リーグでの活躍は続き、今や「世界一の野球選手」の名を冠するに値する。大リーグ１年目の今永昇太投手の快投に胸躍らせる人も多いだろう▲野球が米国から“輸入”された明治の頃、野球好きの正岡子規は詠んだ。〈今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸の打ち騒ぐかな〉。大谷選手も今永投手も選出された大リーグのオールスター戦が近い。そぞろに胸の打ち騒ぐかな。（徹）