「明治日本の産業革命遺産」(本県など8県)の構成資産「小菅修船場跡」(長崎市小菅町)。7月末から地元の小菅町自治会(約210世帯)が中心となり観光客の案内を始めた。1869年に薩摩藩とグラバーが共同で建設し、日本で初めて蒸気機関を取り入れた洋式ドック。歴史資料にある事柄はもちろん説明するが、「自分が幼いころに見た修船場や人々の風景も伝える。地域がこの場所を大切に守っていることも知ってもらいたい」。
同町で生まれ育った。幼少期まで修船場は稼働し、周囲は遊び場だった。父は船大工で、自身も修船場を所有する三菱重工長崎造船所の香焼工場で勤務。造船業に携わっただけに、日本近代化の礎となった資産の価値はよく分かる。世界遺産登録前、市から「地元で観光案内を」と頼まれたときは「ドックを見守る住民がやらねば」と感じた。
だが、単独では決められないと返答を保留し、自治会の役員会に諮った。地元にガイドの経験者はいない。簡単な仕事ではなく、反対があっても不思議ではなかったが、みな同じ思いだった。定年退職するなど時間に余裕がある9人がガイドになると手を挙げた。
メンバーで資料を持ち寄り、勉強会も開いた。「ここは古写真を見せた方が分かりやすい」「方言で解説すれば観光客は喜ぶのでは」。ガイドの方法をそれぞれが模索している。
案内は土日祝日の午前9時から午後4時まで。午前と午後に分かれ、それぞれガイド2人が待機。お盆休みは120人以上が訪れる日もあり、盛況だった。額に汗しながら案内していると、地元の若者が「手伝えることがあったら言って」と声を掛けてきた。ガイドは地域と観光客だけでなく、住民同士のつながりも強くする-。そんな手応えも感じている。
小菅町自治会の 喜多満数会長(68) 小菅修船場跡でガイド 地域ぐるみ、つながり強く
長崎新聞 2015/09/01 [11:40] 公開