生産者と市民つなぐシイタケ 長崎・対馬で栽培体験会がスタート 持続可能な地域づくりに

2025/03/17 [11:29] 公開

原木に菌を植え付ける村岡さん(右端)と親子=対馬市厳原町

原木に菌を植え付ける村岡さん(右端)と親子=対馬市厳原町

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対馬の特産品の一つ、原木シイタケ。生産量は県内の9割超を占めるが、高齢化や後継者不足など生産者を取り巻く環境は厳しい。そんな中、シイタケ栽培の体験を通じ、生産者と市民をつなぐ取り組みが今月始まった。

 8日午前。対馬市厳原町椎根の林に、柔らかな日の光が差し込む。1組の親子が原木シイタケ生産者の桐谷輝美さん(72)から説明を受けていた。
 桐谷さんが木にドリルで穴を開け、そこにシイタケ菌を付着させた木片を親子が埋め込む。作業を体験した同町の齊藤朱真ちゃん(6)は笑顔で「楽しい」と繰り返した。父親は「シイタケ栽培など山に関する体験を子どもにさせたいと思っていた」と目を細めた。
 シイタケは、自然の中でコナラなどに菌を植え付けて栽培する「原木」と、人工的に育成する「菌床」に大きく分けられる。対馬産の原木シイタケは大陸からの季節風と乾燥した風土で育ち、肉質や味、香りが良いのが特徴。2023年の生産量は21トンで県内の9割以上を占める。
 だが、原木シイタケの生産者は減少の一途。1980年代は1252戸を数えたが23年時点では102戸と10分の1以下にまで減った。輸入急増による価格下落などが要因だ。
 シイタケの栽培体験会を企画したのが同町の村岡幸代さん(72)。交流サイト(SNS)で募った市民と取り組んだスイカ栽培が好評だったため、「シイタケ栽培のことも市民に知ってほしい」と知人の桐谷さんに依頼した。これまでに計4組が参加。活動は1年間を予定している。
 「もっと対馬を好きになってほしいし、今後、参加者の中からシイタケ栽培に関わってくれる人が出てきてくれればうれしい」と桐谷さん。村岡さんは「生産者と子育て世帯などとの間に新たな交流が生まれ、持続可能な地域づくりにつながれば」と話す。