被爆体験者とは? 被爆体験者と被爆者の違いは?

2024/08/02 [10:17] 公開

被爆地長崎で「解決に至っていない最大の課題」ともいわれている被爆体験者問題。体験者は8月9日、岸田文雄首相と初めて面会します。この問題をあらためて整理しました。

 -被爆体験者とは。
 国が指定した被爆地域の外で、爆心地から半径12キロ内で原爆に遭った人です。爆発の光を感じたり、爆風で身体が吹き飛ばされたり、家中のガラスが割れた地域もありました。放射線による急性症状とみられる脱毛や歯茎からの出血、被爆者に多いとされる病気になった人もいます。

 -「国が指定した被爆地域」とは。
 国が被爆者を認定するために定めた「原爆被爆地域」と「健康診断特例区域(第1種)」を合わせた南北約12キロ、東西約7キロの地域です。科学的検証や証言ではなく、原爆投下当時の行政区域を基にしました。複雑な形で、同じ距離で原爆に遭っても被爆者とそうでない人に分かれています。

 -被爆体験者と被爆者の違いは。
 被爆地域内で被爆するなど一定の要件を満たすと、被爆者と認められ、ピンク色の「被爆者健康手帳」が交付されます。精密検査を含む年2回の健康診断と、ほとんどの疾病に医療費が支給され、健康管理手当など各種手当もあります。被爆者とみなす第1種健康診断特例区域にいた人は、青の「第1種健康診断受給者証」が交付されますが、特定の疾患と診断されると被爆者健康手帳になります。
 一方、体験者には青色の「第2種健康診断受給者証」が交付されます。年1回の健康診断のみで精密検査は対象外。被爆体験による精神的要因に基づく心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患と合併症であると診断されると、オレンジ色の「被爆体験者精神医療受給者証」が交付され、一部の疾病に医療費が支給されます。手当はなく、原爆放射線の影響も認められていません。

 -どんな疾病が認められていますか。
 精神疾患は、うつ病やパニック障害、不眠症など。合併症は狭心症、甲状腺機能亢進(こうしん)症などです。2023年度から対象が拡大し、胃がんなど7種類のがんが追加されました。しかし、調査研究名目での拡充で、放射線や心的外傷との関連を認めていません。