長崎の銭湯「徳の湯」 70年の歴史に幕…最終日は無料開放「ゆ~っくり入ってきまっせ」

長崎新聞 2025/03/31 [12:00] 公開

番台に座り、常連と話す清志さん=長崎市、徳の湯

番台に座り、常連と話す清志さん=長崎市、徳の湯

  • 番台に座り、常連と話す清志さん=長崎市、徳の湯
  • 湯巡りが楽しめる浴場
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「長崎市上野町にあるお風呂屋さん『徳の湯』が閉じるそうです。ぜひ取材してください」。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」に依頼が届いた。市によると、「銭湯」と呼ばれる一般公衆浴場は市内に公営の市池島港浴場のほか、民間の4軒があるのみ(3月28日現在)。31日で約70年の歴史に幕を下ろす徳の湯の、のれんをくぐった。

 「どうぞ、ゆーっくり入ってきまっせ」。番台から店主の濵田清志さん(90)が利用者に声をかけていた。いつもなら、番台は妻スミ子さん(88)の場所。けがで入院したことや設備の老朽化、夫婦の年齢も考え、今月に入り閉店を決めたという。

 徳の湯は1957年、清志さんの父徳治さん(故人)が開業。清志さんは神戸市のガラス会社で6年働き、後を継いだ。ピーク時の昭和40年代(65~74年)は1日に約300人の利用があり、「芋の子洗いの状態だった」と懐かしむ。燃料が石炭の時代は火の番で忙しかったが、自動化された今ではボタン一つ。ボイラーの調子が思わしくなく「だましだまし使っている」状態だそう。

 浴槽は男湯、女湯にそれぞれ三つ。ぬるめのレモン湯は岩風呂、薬湯や深めの湯つぼもあり、巡るのが楽しい。「薬湯で汗をかいて、水をかぶるとサウナに入ったようにすっきり」「お湯がやわらかいの」「いつも清潔」「独り暮らしでわざわざお湯を沸かすのも、掃除も大変。助かってました」。家にお風呂があっても、常連たちがわざわざ来たくなる理由を教えてくれた。

 「たっぷりの湯に気持ちよく漬かってもらうのが一番たい。少しは地域のために貢献できたかな」と清志さん。県公衆浴場生活衛生同業組合の理事長を30年以上務め、2022年に旭日双光章も受章した。

 最終日、31日の営業は午後3時~7時半。これまでの“ご愛浴”に感謝し無料で開放する。午後4時から、常連さんが企画したお別れ会もある。夫婦そろってお客さんを出迎える予定。