基金で「こども場所」支援…寄付など財源、理解広がるか<2025年度・長崎県予算案から②子ども>

2025/02/26 [10:20] 公開

子どもや若者らが体験活動を通してコミュニケーション能力を磨く長崎市のNPO「体験楽習クラブ さ~くる」は、10月に設立20年を迎える。長崎大在学中から長崎YMCAで青少年の野外活動に携わった吉田伸吾代表(53)が、2005年に設立。吉田代表は普段、長崎障害者職業センター(長崎市)で働きながら今も活動を続けている。
 今月15日、大分県九重町で実施したスキーキャンプには子ども29人、大学生らボランティアスタッフ24人が参加した。吉田代表のスケジュール帳には、研修や毎週の活動、イベントなど年間予定がびっしりと書き込まれている。「続けているうちに生活の中心になった」とやりがいを語る。
 25年度の事業で県は、同NPOのような子ども向けのボランティア団体や子ども食堂、フリースクールなどを「こども場所」と定義し、本年度中に創設する「こども未来応援基金」を財源に開設や活動を支援する。25年度当初予算案に基金積み立てなどに充てる6200万円を盛り込んだ。
 基金は25年度までに計3800万円を積み立て、ふるさと納税などを活用して個人や企業から寄付を募る。子どもへの支援の輪を広げるため、中間支援組織も立ち上げる。県内の外部団体に委託して相談窓口を設け、民間活動の支援や官民のマッチングを促進する狙い。県が現在把握している「こども場所」は110カ所。県は事業を通じて29年度中に、これを小学校区の数(現在307校区)まで増やす目標を掲げる。
 しかし、事業への理解が広がらなければ支援も広がらず、基金への寄付が集まりにくい恐れがある。
 県は基金設立の背景に企業などからの寄付先を求める声があるとするが、近年の県の企業版ふるさと納税で、子ども政策向けの寄付金は20万円だけの年もあれば1千万円の年もあって安定しない。長崎、諫早両市にも子ども政策の基金があり、寄付先として競合しないかも懸念される。
 県内で子ども支援の中核的な役割を担う関係者は中間支援組織について「計画がぼんやりしている。形だけにならないか」と指摘する。
 基金について「体験楽習クラブ さ~くる」の吉田代表は「単に備品購入などではなく、人材育成に使えると良い。ただ、1年検討していたら間に合わない問題もある。素早い対応を心がけてほしい」と望んだ。
 自身が続けられなくなったら解散も考えられるが、「もし後継者ができれば残していきたい」。民間団体が使いやすく、新しい担い手が増えるような充実した支援の仕組みが構築されれば、存続につながるかもしれない。