言葉の裏に被爆者の怒り…被団協「基本要求」策定40年シンポ 国民も運動引き継いでいくべき

2024/11/25 [10:31] 公開

被団協の「基本要求」に込められた被爆者の思いなどを語る濱住事務局次長(左)と大学生ら=東京都千代田区、主婦会館プラザエフ

被団協の「基本要求」に込められた被爆者の思いなどを語る濱住事務局次長(左)と大学生ら=東京都千代田区、主婦会館プラザエフ

  • 被団協の「基本要求」に込められた被爆者の思いなどを語る濱住事務局次長(左)と大学生ら=東京都千代田区、主婦会館プラザエフ
  • 昭和女子大などの学生らによる研究展示。「基本要求」の内容を議論した際の議事録(手前)なども展示された=東京都千代田区、主婦会館プラザエフ
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被爆者の全国組織、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が運動の礎とする「原爆被害者の基本要求」を策定してから40年を迎えた。2本柱の「核兵器廃絶」と「国家補償に基づく援護」は今なお実現せず、次世代への運動継承も課題となっている。ノーベル平和賞の受賞決定で被団協が注目される中、基本要求の意義を問い直すシンポジウムが24日、東京都内で開かれた。
 基本要求は原爆投下から約40年後の1984年11月に策定された。シンポで登壇した被団協の濱住治郎事務局次長(78)は「言葉の裏には被爆者の怒りが詰まっている。被爆者が歩んだ人生や現在の苦しみ、将来の不安を知ることができる」と解説した。
 策定のきっかけは、日本政府が80年に示した考え方だった。戦争の犠牲は国民が等しく耐え忍ぶべきで、国家補償はしない-との内容で「受忍論」と呼ばれ、現在も引き継がれている。
 米国が広島と長崎に投下した原爆で家族の命を奪われ、戦後も病や差別に苦しんできた被爆者たちは猛反発した。被団協は全国の被爆者に意見を求め、議論を重ねながら、核廃絶と国家補償を軸とする基本要求をつくった。
 基本要求は、原子野の惨状や戦後の苦労に触れ「原爆は人間として死ぬことも、人間らしく生きることも許しません」「絶対悪の兵器」と表現。非人道的な原爆被害は国が遂行した戦争の結果生じたとして「国家補償を行うことは、核戦争被害を国民に『受忍』させないと国が誓うことであり、『ふたたび被爆者をつくらない』ための大前提」と訴えた。
 ノーベル賞の授賞理由には被爆者の証言が挙げられている。濱住次長は「個々の証言を裏付けにして(基本要求の)一つ一つの文章ができた。今後も被団協が(全国で)横の連携を取り、受忍論を乗り越えることが大事」と強調した。
 被団協の工藤雅子事務室長(62)は「基本要求は被爆者だけのものではない」と指摘。受忍論は現在も維持されており「過去も未来も戦争被害を我慢しなさい、と私たち全員が(政府に)言われている。これと戦う被爆者運動を被爆者ではない国民も引き継いでいくべきだ」と語った。
 シンポは被団協と、原爆関連資料の保存に取り組む東京のNPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」、被爆者運動を研究する昭和女子大学生らの「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」が開催。約30人が参加した。