平和祈念式典

2024/08/10 [09:00] 公開

暑い。でも、前の日ほどではないかも…と一瞬だけ考えたのはただの錯覚だったか、連日の猛暑でいくらか耐性が高まっているのか。会社近くの電停で待つこと数分、平和祈念式典の会場を目指す▲普段はガラガラのことも多い路面電車がきょうは満員だ。外国人の姿も目立つ。近くに立っていた男性の2人連れは知らない国の言葉で会話していた。原爆資料館前で十数人が電車を降り、次の平和公園で同じぐらいの人数が降りた▲式典の平和宣言で鈴木史朗長崎市長は世界の「地球市民」に結集を呼びかけた。ついさっき電車で乗り合わせた人びとの顔を思い浮かべた。夏の旅の目的地に「8月9日のナガサキ」を選んでくれたのだ。それが心強い▲〈11時2分、止まったままの柱時計を見るたびに79年前の悪夢がよぎります〉。三瀬清一朗さんの「平和への誓い」が始まった頃、会場をすうっと風が吹き抜けていった。今はいない誰かが「がんばってね」と背中を押したのかもしれない▲一昨日の地震対応で来県が危ぶまれた岸田文雄首相は予定通り参列した。決定的に熱量の足りないスピーチの言葉が、聞く者に何一つ刺さらないまま、つるつる続いた▲妙な形容を思いついてしまった。「ワンランク上の棒読み」-棒読みにランクがあるかどうかは別として。(智)