現職と新人の一騎打ちか…長崎・諫早市長選の直前情勢 争点なく「信任投票」との声も

長崎新聞 2025/03/06 [10:30] 公開

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任期満了に伴う長崎県諫早市長選の告示が16日に迫った。激しい三つどもえの戦いだった前回とは一転し、当初は「無投票」とみられていたが、先月中旬、新人の犬尾公氏(51)が立候補を表明。2期目を目指す現職の大久保潔重氏(58)との一騎打ちの公算が大きくなっている。

 「選挙は何があるか分からない。しっかり勝ち上がって市政を推進したい」

 1日、大久保氏の事務所開き。商工、建設、農林などの団体関係者や、推薦する自民の県議、市議ら約480人が出席した。前回は他の陣営だった顔触れが一堂に会する中、大久保氏は2期目への決意を語った。

 4年前は後援会組織を中心に知名度の高さを生かした選挙戦を展開。「来てよし、住んでよし、育ててよし」をスローガンに激戦を制した。1期目では子育て支援の3本の矢として、小中学生福祉医療費の現物支給、同時在園の第2子保育料の無償化、市立小中学校の給食費無償化を実現させた。

 積極的な企業誘致や新産業団地の整備にも着手した。定住促進のため、近隣の2市2町とつくる県の「長崎都市計画区域」から離脱を表明。優良な宅地供給を可能にする「諫早市の新しい都市計画」では、市街化区域と市街化調整区域とに区分する“線引き”制度を廃止し、土地利用の規制緩和を目指している。

 「歴代市長は石橋をたたいても渡らないほど慎重な運営だった」。あるベテラン市議は次々と公約を実行する大久保氏のフットワークの軽さを評価する。だが「前市長が進めていた事業が結実しただけ」「土地利用の規制緩和よりも空き家の有効活用が先ではないか」といった不満もくすぶる。

 それでも「2期目まではそのままでいい」という声が多く、選対本部長を務める元県議の八江利春氏は「前回の3候補の票が一本化されてきた」と手応えを語る。佐藤慎二後援会長も「今回は勝ち方が大切。6万票以上を獲得したい」と青写真を描く。

 一方で、2017年の市長選に出馬し、5785票獲得して落選した犬尾氏。今回、告示約1カ月前の2月14日、市内で会見し、自身が党首を務める団体「諫早党」の托鉢(たくはつ)募金で、立候補時に納める供託金が支持者から集まったことを明らかにした。

 大手不動産会社で大規模都市開発に携わった経験から「諫早を日本一のまちにする」と意気込みを語り、大久保氏が目指す「新しい都市計画」については「そこまでのニーズはあるのか」と疑問を呈す。さらに「前回の市長選で、約4万人は大久保氏の名前を書いていない」と強調し、現職の批判票の受け皿を狙って市内を車で回っている。

 ここまで目立った争点もなく、事実上の“信任投票”とささやかれている今回の市長選。政策論争はほとんどないまま、投票率の低下が懸念されている。