「平和の語り部」育成へ 戦争体験をより広く 長崎県連合遺族会

長崎新聞 2025/04/26 [11:50] 公開

戦後80年に合わせ、長崎県連合遺族会(山下裕子会長)は本年度、戦争の記憶を後世に伝える「平和の語り部」の育成に本格着手する。戦中戦後の体験を語る戦没者の遺族が、同様の経験を持つ人の“手本”となり、多くの語り部を育て、平和教育への協力を目指す。
 厚生労働省は2024年度、日本遺族会が長年取り組んできた平和の語り部を事業化。本年度は前年度比4倍の1億円を予算化し、同会を事業者に選定した。遺族が戦中戦後の記憶を話す「講話型」、学生らと平和について話し合う「対話型」、戦跡や遺構を案内する「体験型」などの同会活動に補助する。
 本県では長崎市を中心に複数の団体が被爆者の体験講話を実施しているが、戦没者の遺族による語り部は少ない。同会の本県組織である県連合遺族会によると、記録が残る1988年度の会員は約3万2400人だったが、昨年12月1日時点で約7100人。戦没者の子ども世代は80代前半と高齢化し、孫、ひ孫世代らの活動参加も少ない。
 県連合遺族会は夏前頃から、諫早、雲仙など各市町の遺族会に平和の語り部事業への協力を要請。戦中戦後の体験を語っている遺族を「活動者」と位置付け、他の遺族らに分かりやすい伝え方などを助言する。人前で話す自信を付けるため、老人クラブや介護施設などで話す機会を設け、語り部を育て、ネットワークを広げる方針。
 県連合遺族会の渥美輝夫事務局長は「戦争の悲惨さ、平和の尊さを伝えるため、多くの方に参加してもらい、遺族会活動の活性化と学校の平和教育に役立ちたい」と話す。問い合わせは同会(電095・843・3585)。