浜屋百貨店(長崎市浜町)の屋上遊園地「プレイランド」が6日、老朽化や運営業者の廃業のため約50年の歴史に幕を下ろす。今は全国で数少ない昔ながらのデパートの屋上遊園地。23歳の記者は幼い頃にプレイランドを訪れたことがあるらしいが、記憶には残っていない。期間限定の営業が始まった2日、昭和にタイムスリップしたようなこの場所を訪れ、子ども時代を懐かしむ地元客らに話を聞いた。
観覧車の白黒写真などが展示された階段を上って屋上に出ると、電子音のレトロな音楽が聞こえ、たくさんの古めかしい遊具やゲーム機が並んでいた。お菓子が詰め込まれたクレーンゲームは、あまり見たことがない「1回30円」。サイレンを鳴らし揺れ動くパトカーの遊具はいまだに現役で、この日も子どもたちを楽しませていた。この風景は50年以上前と変わらないのだろう。
姉妹で遊具などを写真に収めていた大村市池田1丁目の綾部廣子さん(48)と良子さん(46)は、2人で遊具を取り合った小学生時代を思い出していた。軽食コーナーでは当時、家で食べられないような物が売られていた。「初めて食べたフローズンや焼きトウモロコシの味が忘れられない」
大きな青いテント屋根の下には、戦闘機の操縦席を模した乗り物や、縫いぐるみが詰まったクレーンゲームなど十数台があった。運営業者が手作業で修理していたというゲーム機や遊具はガムテープなどで補修され、ハンドルなどの持ち手は色あせていた。へこんだボタン、すり減った座席が時の流れを感じさせる。
中高生の頃よく訪れていたという西彼長与町のデザイナー、安部志保さん(46)は、辺りを見回し「なにも変わってない。ここまでよく残ってくれた」と感極まった様子だった。
浜屋百貨店は、最後の営業期間に当時の雰囲気を再現しようと、かつて軽食コーナーで提供していたうどんを復活させた。だしが香り食欲をかきたてるのか、昼時には行列が途切れなかった。同百貨店営業企画部長の山野勝彦さん(60)は、客として訪れていた中高生時代を思い出し「味はともかくとにかく安かった」と笑顔。
運営側に立った今は「ただ最後まで無事に終わらせたい」。言葉に哀愁がにじんだ。変わらない風景をよりどころに、楽しかった子どもの頃の記憶を幸せそうに語る人たち。記者も一緒に童心に返った気がした。