衆院長崎3区補欠選挙(28日投開票)の告示が16日に迫った。立憲民主党現職の山田勝彦氏(44)=比例九州=と日本維新の会新人の井上翔一朗氏(40)が立候補を予定。保守地盤とされる長崎3区で自民不在の選挙戦を迎える見通しの中、両陣営とも保守層の切り崩しを狙う。熱を帯びる前哨戦を追った。
13日、大村市のJR新大村駅東口。山田氏の街頭演説に野田佳彦元首相が駆け付け「政権交代こそ最大の政治改革」と訴えた。だが、論戦の相手と想定された自民は「今回逃げちゃった」(野田氏)。立民県連幹部は「審判を下せない」と憤る。
補選を「最重点」と位置付ける党本部からは、泉健太代表をはじめ重鎮が続々現地入り。党幹部は「長崎は圧勝しなければ」とげきを飛ばす。前回谷川弥一氏に惜敗した山田氏は「今度こそ選挙区で勝つ」と意気込み、離島振興などを訴え保守層への浸透を図ってきた。山田氏は「地域課題を解決する政策は幅広く共感される」と手応えを口にする。
ただ、自民の不戦敗は必ずしもプラスに働かないとの見方も。蓮舫参院議員は5日、同市で記者団に対し「相手は自民の金権政治」と息巻いたが「政治とカネ」は自民の不在で争点としてぼやけた格好だ。
前回、世代交代などを訴えて保守層に食い込み、谷川氏に肉薄した山田氏。今回は維新に保守票が流れるという危機感がある。投票率の低下も懸念。支持者の間では「自民が出た方が良かった、となる可能性もある」とささやかれる。後援会幹部は不安を振り払うかのように「敵は自らにあり」と語り、組織の引き締めを図る。
井上氏は本土を中心に、つじ立ちや街頭演説を重ね浸透を急いでいる。「補選は国会で注目されている」と、維新の国会議員が公務の合間に日替わりで応援演説に入っている。
12日、大村市内のスーパー前。聴衆は数人だったが、応援演説を終えた青柳仁士衆院議員(大阪14区)は、その場にいた高校生に語りかけた。井上氏は「維新と私自身を知ってもらう選挙。維新と立民、違いも分かってもらえる」と手応えを語る。馬場伸幸代表は5日、同市での街頭演説で立民を批判。「改革保守」政党と訴え旧来の自民支持層にアプローチを図った。
維新が県総支部を立ち上げたのは2022年5月。昨年の統一地方選で長崎、大村で計3市議が誕生したが、その後離党。馬場代表も「3歩進んで2歩下がるようなこと」と述べ、地方組織は立民と比べ手薄なのは否めない。
さらに、井上氏の出馬表明はわずか2カ月前。演説では6年前に福岡市から平戸市へ移住した経歴にも触れ「地盤も看板も知名度もお金もない」と強調。取材に「相手候補は父の代から続く地盤と知名度がある」と危機感をあらわにする。
陣営関係者は「大票田の大村や佐世保が肝になる」と分析。応援に入った国会議員は「党としても総力戦。できることは全てやる」と話した。
衆院長崎3区補選 立民・山田、維新・井上両陣営 自民支持層の切り崩しへ 告示直前情勢
2024/04/15 [10:15] 公開