芸術作品をさまざまな視点から見つめ、気づきを語り合う「対話型鑑賞」の手法を平和教育などに役立ててもらおうと、長崎市出島町の県美術館は今月、教育現場向けのサイト「鑑賞教育×平和教育プラットフォーム PEACE」の運用を始めた。所蔵作品の写真を用いた授業案や活用事例などを紹介し、幼稚園・保育園から大学まで幅広い活用を呼びかけている。
「PEACE」は、同館所蔵の作品を題材とした授業案や関連資料、高精細画像を掲載。原爆の惨禍を描いた故丸木位里・俊夫妻の「母子像 長崎の図」(1985年)、被爆者を撮り続けた写真家の故東松照明さんの「山口仙二さん」(1998年)など、5作品の授業案を紹介している。
例えば「母子像 長崎の図」の授業案は「五感をひらく作品鑑賞」と題し、描かれた人物の様子や表情などをじっくり観察しながら、目には見えないにおいや音などへ想像を膨らませていく内容。「何が起こったのだろう」「描かれている人の表情は」など、児童生徒への声かけに活用できる鑑賞シートも準備した。
サイトは同館ホームページから閲覧可能。利用申請すると、個々の端末から細部を拡大して鑑賞する「鑑賞・授業用ページ」、授業案の詳細や関連資料、活用事例などを紹介した「指導者用ページ」などを見ることができる。6月1日に、教職員向け説明会も予定している。
同館は開館時から対話型の鑑賞をコンセプトにしている。考えを伝え合うことで自他理解を深めるこの手法は平和教育にもつながると考え、2021年度から鑑賞教育プログラムの開発に取り組んできた。サイト制作は文化庁の「23年度博物館機能強化推進事業 Innovate MUSEUM事業」に採択された。
同館の堀越蒔李子エデュケーターは「子どもたちの様子を分かっているのは先生方。こちらの授業案をアレンジしながら、さまざまな授業に鑑賞の視点を取り入れてほしい。PEACEを機に作品に興味を持ち、いつか美術館に足を運んでもらえたらうれしい」と話している。
平和教育に鑑賞の視点を 長崎県美術館が「PEACE」の運用開始
2024/04/10 [11:57] 公開