汚れ剥がれる船舶塗料を開発 大村の2企業と長崎県窯業技術センター 陶磁器を再利用 

2024/02/28 [10:24] 公開

(左から)3者共同開発した表面剥離型塗装(白い面)を施した木板を持つ林田氏、高松氏、中村氏=波佐見町稗木場郷、県窯業技術センター

(左から)3者共同開発した表面剥離型塗装(白い面)を施した木板を持つ林田氏、高松氏、中村氏=波佐見町稗木場郷、県窯業技術センター

  • (左から)3者共同開発した表面剥離型塗装(白い面)を施した木板を持つ林田氏、高松氏、中村氏=波佐見町稗木場郷、県窯業技術センター
  • 表面剥離型防汚材料の構造と防汚メカニズム(提供)
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 長崎県大村市内の2企業と県窯業技術センター(東彼波佐見町)が、汚れにくい船舶用塗料を共同開発した。表面が少しずつ剥離し、腐食や貝殻の付着などを防ぐ。原料には、廃棄される陶磁器を再利用するなど環境に優しい。昨年7月に特許を取得しており、来年発売を目指す。
 同センター主任研究員の高松宏行氏の研究に、消防自動車メーカーで商社機能にも注力しているナカムラ消防化学(中村康祐社長)が着目。健康建材メーカーのアーテック(林田雅博代表取締役)にも参画を求め、実用化にめどを付けた。
 船底にフジツボや海藻など海洋生物が付着すると、波の抵抗が増し燃費が悪化する。一方、劣化した塗料から防汚剤が溶け出せば、海洋汚染が懸念され、効果の持続性やコスト面にも課題がある。高松氏の研究は、海岸の硬い火成岩に生物が強く固着しているのに対し、軟らかく崩れやすい堆積岩には少ない点に着想した。
 通常、塗装は剥がれにくい強度が求められるが、それとは「真逆の発想」(林田氏)。原料の粒子には、骨材(砂など)や廃棄された陶磁器を粉砕して活用する。その結合剤として配合する有機物が、表層から少しずつ水と二酸化炭素(CO2)に分解することで、粒子が海洋生物を付けたまま剥がれていく。粒子の大きさや塗る厚みによって剥離のスピードを変え、使用現場のニーズに応じる。
 当面はアーテックの工場で製造。ナカムラ消防化学が全国に持つ販売代理店網や海外販売経験を生かす。橋梁などの海洋構造物への応用も視野に入れている。