子宮頸がんワクチン男性も助成を 長崎大生が市に要望 罹患率ワースト上位受け

2024/02/11 [10:30] 公開

鈴木市長に要望を伝える(右から)湧川さん、世羅さんら=長崎市役所

鈴木市長に要望を伝える(右から)湧川さん、世羅さんら=長崎市役所

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 若い女性に多いとされる子宮頸(けい)がん。その原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)は女性だけでなく、男性にも感染し、がんを起こす恐れがある。ワクチンで予防可能とされ、小学6年から高校1年相当の女性は全額公費で定期接種が受けられるが、男性は対象外。このため、接種の意義を広く伝える長崎県内の医学生らのグループが、男性への接種助成を求め活動している。
 グループは「若者にHPVワクチンについて広く発信する会Vcan」長崎支部。2022年に発足し、長崎大医学部医学科5年の湧川立規さん(23)、世羅涼さん(24)が若い世代へHPVワクチンに関する情報提供や啓発を続ける。全国でも同大など17大学の27人が、中高生への出前講座などに取り組んでいる。
 国内では13年4月、小学6年~高校1年の女子を対象にHPVワクチンの定期接種が始まったが、接種後に全身の痛みや運動障害などを訴える報告が相次ぎ、国は同6月、積極的な接種呼びかけを中止。世界保健機関(WHO)も接種を推奨し、国内でも安全性が確認できたとして、22年4月、定期接種の呼びかけを再開した。
 接種機会を逃した1997年4月2日~2007年4月1日生まれの女性が無料で接種できる「キャッチアップ接種」を来年3月まで実施。副作用のイメージや周知不足が響き、必要とされる3回接種を終えた人は対象者の3割程度にとどまる。
 男性もHPV感染によって中咽頭がんや陰茎がんの恐れがあり、接種でがん予防や性交渉によるパートナーの感染も防げる。多くの先進国で男性も無償接種できるが、国内では自費で5万~6万円かかる。関東以北の9自治体が助成制度を設け、東京都も補助を検討しているが、本県で助成制度のある自治体はゼロ。
 国立がん研究センターによると、19年までの4年間、本県は子宮頸(けい)がんの罹患(りかん)率が全国ワースト6位以内で推移。これを受け、産婦人科医を目指す湧川さんら3人は1月29日、長崎市役所を訪れ、鈴木史朗市長に男性の接種助成と啓発を要望。市は助成に慎重な姿勢を示したが、ホームページに情報を掲載し啓発に努めるとした。
 湧川さんは「予防できることを知らなかっただけで、将来後悔してほしくない。HPVワクチンの話題を通じて、若者のヘルスリテラシー向上を目指したい」と語った。