カネミ油症事件 巡り 五島、長崎など5会場で全国集会 「PCB次世代問題生んだ」

2023/12/03 [11:10] 公開

油症被害者の子どもの救済などを訴える岩村定子さん(右)=五島市役所

油症被害者の子どもの救済などを訴える岩村定子さん(右)=五島市役所

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 カネミ油症事件を巡り、原因物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)の製造企業カネカ(旧鐘淵化学工業)の社会的責任などを問う集会が2日、五島、長崎両市など全国5会場をオンラインで結んで開かれた。カネカは過去の裁判で原告団と和解後、被害者との対話に応じていない。被害者ら集会参加者は「製造禁止になるまでPCBを増産し続けた結果が、半世紀先の次世代の問題を新たに生み出した」などと企業責任を訴える声明を採択した。
 1970~80年代、被害者が国やカネカなどを相手取り損害賠償を求めた集団訴訟を担当した高木健康弁護士が経過を説明。「カネカは国内のPCBの大半を製造。有毒性を隠したまま利便性だけを強調し深刻な環境汚染を起こした」とし、救済に向けた社会的責任があることを指摘した。
 油症の主因ダイオキシン類は汚染油を摂取した母親の胎盤や母乳を通じ、子や孫に移行した可能性があり、全国油症治療研究班(事務局・九州大、辻学班長)は2021年から次世代に特化した健康影響を調査中。被害者団体の代表によると、6月に研究班が先天性疾患の一つ、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)の発生率は次世代で高い傾向にあると報告した後、口唇口蓋裂の3人のうち2人は、母親ではなく父親が油症被害者だったとの説明があったという。油症の父親から子どもへ何らかの影響が及んだ可能性もあるとみて今後の調査を注視する。
 集会では、各地の被害者が意見を述べた。油症2世の下田恵さん(34)=諫早市=は「油症検診会場で若い世代を見かけることが多くなった。子は親に心配かけたくなくて話せないこともある。この思いを救済につなげてほしい」と語った。油症1世の岩村定子さん(74)=五島市=は、この日が生後4カ月で亡くした長男の命日だと話し、「油症患者の子どもは全員救済を」と訴えた。
 集会は計78人が参加。これに先立ち主会場の兵庫県高砂市では、カネカ高砂工業所前で救済の申し入れ書を読み上げた。