サッカーの第102回全国高校選手権県大会最終日は12日、諫早市のトランスコスモススタジアム長崎で決勝が行われ、長崎総合科学大付が今夏のインターハイ3位の国見を3-1で下して、2年ぶり9度目の優勝を果たした。長総大付は全国高校選手権(12月28日開幕・首都圏)の出場権を獲得。組み合わせ抽選会は今月20日に行われる。
長総大付は前半7分に先制。MF宇土の左CKからFW福島、DF淺見が立て続けに放ったシュートはいずれもクロスバーに阻まれたが、こぼれ球を福島が豪快に蹴り込んだ。後半8分に追加点。MF甲斐が右サイドからドリブルで切り込み、中央からMF金城が決めた。国見も18分、交代で入ったばかりのFW山﨑が右足で流し込んで再び1点差としたが、27分に長総大付の福島が3点目を奪って突き放した。 通算7得点の福島文輝(長総大付)と浦大世(長崎南山)が大会得点王に輝いた。
◎小嶺先生の麦わら 生徒見守る
名将が愛用した麦わら帽子が、ベンチから見守ってくれていた。
長崎総合科学大付の現3年生は昨年1月に他界した小嶺忠敏前監督の最後の教え子たち。今季一度も立てていなかった県の頂点をつかみ取り、1年生から主力だった主将のDF平山は「小嶺先生にいい報告ができる」と目を真っ赤にした。
17度の全国制覇を誇る名将を失って以降、長総大付は県内でも苦しい戦いが続いていた。昨夏のインターハイ切符は勝ち取ったが、昨冬の全国高校選手権県大会は準々決勝敗退。1月の県新人大会は決勝で敗れた。6月の県高総体も3回戦で国見に惜敗。県内を勝ち抜く絶対的な強さが薄れていた。
周囲から弱体化を心配する声も少なからずあった。小嶺前監督と一緒に長総大付を強豪に育て上げた定方監督は「評価は周りがすること。それを変えるのは自分たち」と悩むチームを鼓舞した。この言葉に選手たちは燃えた。試合で負けたら何が駄目だったのかを徹底的に話し合った。練習では声出しなど基本的なことから意識を変えた。衝突もしながら、夏を越えてたくましくなった。
決勝は恩師が求め続けたハードワークで主導権を握った。リードしても決して気を緩めない。ハーフタイムには、FW福島が「後半は苦しい時間帯が必ずある。その時は麦わら帽子を見よう」と声をかけた。1点差に迫られても運動量、球際、競り合いで負けない。チームに植え付けられていた力強さが、ピッチの上にはあった。
喜びに沸く応援団の前で、平山は恩師の顔を思い起こしながら言った。
「優勝しても小嶺先生なら失点したことに怒っていると思う。だからこそ全国では無失点。それなら笑顔になってもらえるかな」
県大会で勝っても厳しい姿勢を崩さなかった小嶺先生。その思いを胸に、最後の教え子たちが全国に乗り込む。