長崎市のパートナー制度 県内初導入から4年 各地で取り組み広がるも、残るLGBT法への懸念

2023/09/02 [10:35] 公開

性的少数者に関する対応ガイドラインの内容などについて語る矢内准教授=長崎市文教町、長崎大

性的少数者に関する対応ガイドラインの内容などについて語る矢内准教授=長崎市文教町、長崎大

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 LGBTなど性的少数者のカップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」を長崎県長崎市が県内で初めて導入して、2日で4年。性の多様性を尊重する社会に向けた取り組みは県内でも徐々に進むが、6月に施行された性的少数者への理解増進法は当事者らが望んだ内容と隔たりがあり、懸念の声も聞かれる。県内の支援団体の代表らは「互いの違いを尊重した上で誰もが安心して暮らせる、働ける社会について考えてもらえたら」と呼びかける。
 同法は差別禁止を求める当事者らの訴えを基に8年前から法整備の検討が本格的に始まったが、保守派の抵抗で議論が停滞。今年2月、当時の首相秘書官の「見るのも嫌だ」という性的少数者への差別発言をきっかけに、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を控えていたこともあり、国会審議が活発化した。
 だが成立を急いだため、学校教育について記した条文に「家庭および地域住民その他の関係者の協力を得つつ」との文言が追加されるなど、保守派の主張に配慮した内容となった。
 「子どもたちの権利が保護者の希望で奪われることへの懸念がある」。県内で性的少数者の支援や啓発活動に取り組む「Take it!虹」代表の儀間由里香さん(34)は学校教育について記した条文の問題点を指摘した上で、「多様な性の在り方について学ぶ機会は自尊感情や他者を受容する土壌形成に大きな影響を与える」と強調する。
 長崎大の矢内琴江准教授(ジェンダー研究)も同法について、「基本的に性的マジョリティー(多数派)目線で、誰のための法律なのかを見失っている印象」とする。その上で「国や地方公共団体の役割、事業主の努力規定を盛り込んでいる。課題はあるが一歩前進とすべき。組織として前に進める根拠となる法律ができた意義はある」と語る。
 同大は2019年、ダイバーシティ推進センターを中心に、性的少数者に関する対応ガイドラインを独自に作成。学生向け文書は全て性別記載欄をなくし、通称名の使用を認めるなど学内の環境整備を進め、これらを盛り込んだ改訂版を22年にまとめた。県も20年に性の多様性に関する正しい知識や対応を解説したハンドブックを作成しており、県ホームページからダウンロードできる。
 パートナーシップ宣誓制度の導入も、都道府県単位でみると本県は30位台と遅れているが、少しずつ広がりつつある。公立病院の入院や手術時の親族同意書にパートナーがサインできたり、家族向けの公営住宅にカップルで入居できたりする同制度。19年に県内で初めて導入した長崎市では今年8月末までに11組が宣誓した。10月には2自治体目となる大村市が導入予定。県も可否を含めて検討している。
 九州では福岡、佐賀両県で県が制度導入している。儀間さんは「他の自治体に転居した場合に利益が失われないよう都市間連携ができるようになれば。県全域でできると大きい」と県の動きに注目する。
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 「Take it!虹」や長崎市のNPO法人心澄などは12月6日に長崎市、同12日に佐世保市で「LGBTQ+サポーター養成講座」を開く。講座やグループワークによる支援者向けの研修。参加無料だが専用フォームから事前申し込みが必要。