長崎大は10日、長崎県内に養殖ブリの一大生産・販売拠点をつくる産学官連携プロジェクトの概要を明らかにした。人工種苗や沖合養殖の新技術によって、安全で安定した供給や環境負荷の軽減を図る。「JAPAN鰤(ぶり)」として2027年に国内、32年に海外での販売を目指し、水産業再生と地域活性化につなげる。
プロジェクト名は「ながさきBLUEエコノミー」。県や協和機電工業(長崎市)など20団体が参画し、本年度から10年間実施する。科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム」に採択され、国から年間最大2億円の委託費が出る。責任者の永安武・同大理事は「(同大が)これほど長い期間、産学官で取り組むプロジェクトは過去にない」とする。
かつて本県の基幹産業だった水産業は、生産量減少や後継者不足などの課題を抱える。プロジェクトリーダーで同大海洋未来イノベーション機構長の征矢野(そやの)清氏によると、海外需要が高い養殖ブリを国内外で安定販売することで、生産者の収入を引き上げ、若者に就労先として魅力を感じてもらえるようにする。
現在のブリ養殖は大半が天然の稚魚を使う。海外で販売するには、安全を担保できる人工種苗が求められるため、「ブリ人工種苗センター」を設立する。
養殖場所は、食べ残した餌などが滞留しやすい内湾ではなく沖合。赤潮対策や環境負荷軽減策として、いけすを浮き沈みさせるシステムを構築する。遠隔操作で監視や給餌もできるようにして生産者の作業負担を減らす。
地産地消でブランド力を高めるために販売施設「長崎マルシェ」も新設。導入予定の「養殖クラウドマネジメントサービス」は生産者や流通関係者、消費者らに対し、生産状況や市場動向などさまざまなデータを提供する。
将来的にはブリ以外の魚種への応用も見据えている。