長崎県佐世保市にある長崎国際大薬学部の田中宏光准教授の研究チームは、栄養素「クメストロール」の含有量を増やした豆モヤシに、アルツハイマー病の発症を抑制する効果があることをマウス実験で明らかにした。19日までに国際科学誌バイオロジーに論文を発表した。今後、臨床試験を始め、人への効果を確かめる。
野菜などに含まれるクメストロールはポリフェノールの一種で、抗がん作用や肥満抑制などの効果が期待される。田中准教授は豆モヤシのクメストロールの含有量を通常の20倍以上に増やす栽培法を開発し、今回の実験で使った。
アルツハイマー病はタンパク質「アミロイドベータ」が脳に蓄積し、神経細胞が失われて発症に至るとされる。
研究チームは神経細胞が失われる過程で、細胞内のタンパク質「タウ」がリン酸化することに着目。その原因の一つがタンパク質「ハスピン」と発見した。クメストロールはハスピンの働きを抑える効果があり、リン酸化を防げると証明した。
その上で、マウス実験を開始。アルツハイマー病を発症する遺伝子を持つマウス40匹を用意し、うち20匹にクメストロールを多く含む豆モヤシをエサとして与え続けたところ、ほぼ全ての個体で発症しなかった。残りの20匹には豆モヤシを与えずに飼育し、全ての個体で発症したという。
研究チームには同大学長で、アミロイドーシス研究第一人者の安東由喜雄教授らも参加した。
田中准教授は佐世保市のベンチャー企業と連携し、豆モヤシの健康食品も製造。「高齢化はアルツハイマー病やがんなどのリスクを伴う。多くの人が健康で長生きできる社会の実現に貢献したい」と話している。
栄養素増やした豆モヤシ アルツハイマー発症を抑制 長崎国際大・田中准教授ら効果証明
2023/02/20 [11:00] 公開