Ｊ１昇格ならず

缶コーヒーのＣＭで宇宙人が内心つぶやいていたのを覚えている。「この惑星の住人は、上を向くだけで元気になれる」。なるほど、いつもそうだといいのだが、上を向くのもそう簡単ではない▲ついつい、うつむいたり、ぼんやり遠景を眺めたり、心の沈んだ時はそういうものだろう。例えば、肩にそっと手を置くような優しい言葉を思い出す。例えば、しばらく現実を忘れられる何事かに没頭する…。上を向くのには少しの助けが要る▲スポーツもそうだろう。一つ上に、もっと上に、と競技者は「上を向く」のを習いとしている。その姿を少しの助けとし、心の支えとしている人は数知れまい▲サッカーのＪ１昇格プレーオフで、リーグ戦３位のＶ・ファーレン長崎が仙台に１－４で敗れた。今度こそ手が届きそうだった、７季ぶりの昇格を逃した瞬間、どれほどの人が上を向くのではなく、ぼうぜんと天を仰いだことだろう▲長崎市にピーススタジアムという新拠点ができたばかりでもある。Ｊ１を目指す熱量はチームに限らず、サポーターに限らず、人々にとって並々ならぬものだったに違いない▲選手の躍動が私たちに上を向かせ、「Ｊ１へ」の応援がチームに上を向かせる。きれいな心のパスを通わせる営みをこれからも忘れまい。今は天を仰いでいても。（徹）