【インタビュー】駐長崎中国総領事に着任した陳泳さん(56) 友好関係をハイレベルに

長崎新聞 2025/04/19 [11:10] 公開

駐長崎中国総領事に着任した陳泳さん

駐長崎中国総領事に着任した陳泳さん

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〈12代目の駐長崎中国総領事に着任。長崎県と中国の友好関係の深化をはじめ、日中間の課題、世界情勢について聞いた〉

 -日本や本県の印象を。
 中国と日本は一衣帯水の隣国。その中で、長崎は古代からの交流の窓口であり、今も先頭に立っている。原爆の歴史もあり、中国での知名度は高い。長崎には中国の文化が多く残り、人々はとても友好的。ここで仕事ができるのは幸運だと感じている。

 -着任の抱負を。
 中国と日本の友好関係は双方の国民の利益に合致する。これまでのつながりをさらに深め、新しい分野での協力も模索したい。今年は在長崎中国総領事館開設40周年。県や長崎市と連携したイベントを考えており、お互いに訪問団を派遣できないか検討している。中国と長崎の人々の往来を拡大し、ハイレベルな関係に押し上げたい。

 -今年は被爆80年。多くの中国人も犠牲となった。
 最も大切なことは悲劇が2度と起こらないようにすること。中国、日本だけでなく、世界の人々の災難となる。長崎市が積極的に取り組んでいる平和活動に敬意を表したい。

 -中国も核兵器を保有している。
 中国は平和を愛する国。かつて万里の長城を築いたのは領土の拡大や他国を侵略するためではなく防衛のためだった。核兵器の保有も自国の安全を守るためであり、最小限の水準にとどめている。先制不使用政策も採っている。

 -中国は東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に伴い、日本産水産物の輸入を規制している。水産業が盛んな本県では懸念や不満の声もある。
 これは政治の問題ではなく食品安全の問題。世界的にまれな原発事故に対し、中国人が安全性を心配するのは自然なこと。政府間で協議を続けており、中国の専門家も海水を検査している。安全性の問題が解消されれば、輸入再開に向かうだろう。

 -トランプ米政権の関税引き上げを巡り、米国と中国の対立が激化している。
 米国の一国主義政策は、貿易のルールを逸脱しており、世界経済を傷つけ、特に(新興・途上国の)「グローバルサウス」の国々に深刻な打撃を与える。こうした不公平な行為に対し、沈黙したり、妥協したりするべきではない。中国は必要な対抗措置を取っている。貿易戦争に勝者はいない。米国がルールを守るよう、日本を含め各国は行動するべきだ。

 【略歴】ちん・えい 江蘇省江陰市出身。中国・外交学院卒。1992年に中国外交部に入り、駐ヨハネスブルク総領事館副総領事、駐東南アジア諸国連合使節団参事官、外交部アジア局参事官などを歴任した。前職は赤道ギニアの駐バタ総領事。趣味は水泳と読書で、「中国の古典文学が好き」。