副業サイトの罠

2024/06/13 [10:00] 公開

数年前のテレビドラマ「ゆとりですがなにか」は、競争心に欠けるとされる「ゆとり世代」が社会の荒波にもまれる姿が描かれるが、その中に「レンタルおじさん」という役があった。吉田鋼太郎さんが演じ、1時間千円で「ゆとり」たちの悩みをじっくりと聞く▲実在する仕事らしい。悩みの聞き役に限らず、店の料理を指定の場所に届けたりと、わずかな空き時間、つまり“隙間時間”を副業に充てる人が増えている▲「男性の相談相手になれば報酬がもらえる」とネットで呼びかけ、応じた40代女性からカネをだまし取ったとして、警視庁などが26人を逮捕した。被害者は全国8600人に上るとみられる▲「女性との接し方に困っていて…」と、被害女性に相談した男も一味だった。言葉巧みに誘導し、報酬をもらうはずの女性にカネを支払わせたらしい▲人手不足の「雇う側」と、隙間時間を生かしたい人を結ぶ、新たな仕組みにも罠(わな)がある。「レンタルおじさん」もうかうか親身になっていられない▲「罠」という字の「目」と「民」を横に並べると「眠」になる。〈民の目は眠くて/罠の中〉(吉野弘さんの詩『「目」の見方』)。裏返せば、まどろむことなくパッチリ開いた目が「罠」を封じる助けになる。気軽な副業も、今や“眼光”を要するらしい。(徹)