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長崎の、その先の風景。
地元経済のけん引役となる各界のみなさんは“長崎の、その先の風景”をどのように展望し、描いていくのでしょうか-。
企業・団体のトップに、事業の成長戦略や地域活性化への思いなど、年頭所感をうかがいました。

粕谷製網

代表取締役

粕谷 英雄

所在地 諫早市川内町485

電話 (0957)22-0373

粕谷製網

代表取締役

粕谷 英雄

今後の漁業のあり方を考える時

 祖父の代に有明海のノリ網の製造所として始まり、定置網を中心とした魚網まで広げていきました。手作業が多い当時は、多くの地域の女性が働いていました。創業から78年、世の中が育てる漁業にシフトしていくなかで、養殖用施設などの販売も増えていきました。
 1985年に耐久性に優れたポリエステル製の網で、亀甲形の「KIKKONET」を開発。破れにくいことから長く使え、環境にも優しいのが特徴です。金属製の網はさびてしまいますが、こちらはさびません。化繊や金属の網ですと3年で交換が必要ですが、「KIKKONET」は3倍以上の期間使い続けることができます。しかも軽くて弾性があるので、作業や運搬、輸送の効率が上がります。
 その特性を生かし、海だけでなく陸上でも活用の幅を広げ、落石防止のネットや熊本城の修復工事の現場でも使用されています。開発から40年経ちますが、他にはないオンリーワン商品で、ブリ養殖日本一の鹿児島県・長島町ではシェアが8割を超えています。現在は、製造ラインにAIを活用して網目の大きさなどの品質管理に役立てています。
 今後は海の環境変化に対応したものづくりが求められます。潮の流れ、魚道を考え、定置網の選定・設置の仕方を提案する力が必要になります。赤潮対策のための浮沈式いけすの開発やイカの産卵場である藻場を「KIKKONET」を使って疑似的に作るなど、漁業者の声に対応しています。日本人は魚が好きなので、これからも伸びていく産業だと期待しています。弊社には技術力があり、信頼も得ていると誇りを持っています。